先日、障害者支援の仕事を始めた知人から、以下の相談がありました。
仕事で「障害者支援」という言葉を使用していたら、
「障害」ではなく「障がい」を使うべき! との指摘・叱責を受けた。どうすればいいのだろう?
という相談でした。
その時、私は「あー、またかぁ。。。」と思いました。
この表記問題。バリアフリーや障害者支援の仕事をしている人なら、おそらく誰もが経験している事案だからです。
元来、私はこのような形式的議論は余り好きではないですし、興味も薄いのですが、この問題で悩んでいる人も結構多くいるので、今回はこの表記問題について考察したいと思います。
また、この表記問題は「障害」「障がい」だけで語られることが多いのですが、ここではもう一歩踏み込んで「障害者」「障害をお持ちの人」「障害を抱える人」という表記の問題にも言及したいと思います。
なお、今回は「障碍」については他の2つに比べて使用頻度も知名度も著しく低いため、今回は除外します。
障害? 障がい?
最近、「障害」ではなく「障がい」という表記が増えてきています。
「障がい」を使用する理由は、
・「障害」の「害」という文字は「害悪」を意味する。なので「障害」を持つ人を傷つけ、差別を助長する。
・「障がい」とした方がソフトなイメージになるので何となく。。。
というものです。
この「障がい」表記に対しは以下の批判があります。
・「害」の意味を考えるなら、「障」の意味も考えなければならない。「障」は「差し障りがある」という意味だから、その理屈からすると「障」も平仮名にしなければならず「しょうがい」と全て平仮名表記になってしまう。しかし、それは余りに変だ。
・「障がい」という表記はなんかイヤだ。理屈を超えて(感覚的に)違和感がある。
・配慮すべきはそこではない。見当違いの配慮は、かえって障害当事者に嫌な思いさせる。
因みに、乙武洋匡さんも「全て平仮名になって変だ」という主張をされています。
行政やNHKの対応
行政やNHKは「障害」と表記しています。
もう少し掘り下げると、文部科学省は「議論の先送り」をした上で、とりあえず「障害」を使用しています。
「障害」の表記については、「障害」のほか、「障がい」「障碍」「しょうがい」等の様々な見解があることを踏まえ、障害者の「者」にあたる部分の表記の在り方も含め、推進会議としては、今後とも、学識経験者等の意見を聴取するとともに、国民各層における議論の動向を見守りつつ、それぞれの考え方を整理するなど、引き続き審議を行う。
文部科学省 ホームページ
NHKは言葉を扱う機関であるため、この点について調査をしています。
それによりますと、
◆「障害」という表記について
抵抗感はない 81%
抵抗感がある 17%
◆「障がい」という表記について
抵抗感はない 77%
抵抗感がある 21%
私はこの調査の内容(調査対象や調査方法など)を詳細に検討していませんが、この調査結果をみる限り、それほど大差ない数字が出ています。なので、NHKは従来通り「障害」という表記にしています(詳しくはNHKの調査報告書を御覧ください)。
以上のことから、行政やNHKなどの公の機関では、いまのところ「障害」表記が主流です。
Twitterでの意見交換
以前、私はこの表記問題に関し、Twitte上で他のユーザーの方々と意見交換をしたことがあります。
そこでは、上記のような議論もありましたが、私が一番納得したのは以下の意見でした。
・どちらが正解ということはない。
・言葉の問題ではない。大切なのは「その言葉を使う人の気持ち」
・しっかりとした信念や理念があるなら、どっちを使ってもよい。
結論(私の場合)
私は「障害」という表記にしています。
その理由は、「障がい」表記に対する以下の意見に賛同しているからです。
・「障がい」という表記には、理屈を超えて(感覚的に)違和感がある。
・配慮すべきはそこではない。見当違いの配慮は、かえって障害当事者に嫌な思いさせる。
また、古くから使用されている「障害」という表記の方が、受け手に伝わりやすいという現実的な理由もあります。
ただし、私は「障害」が正解だと言っているのではありません。
どちらを使用しても良いと思っています。
つまり、敢えて正解・不正解を言うのであれば、Twitter上で述べられた以下の意見が正解だと思っています。
・言葉の問題ではない。大切なのは「その言葉を使う人の気持ち」
・しっかりとした信念や理念があるなら、どっちを使ってもよい。
バリアフリーや障害者支援を仕事にする方へ
これまで述べてきた通り、私の結論は「どちらでも良い」です。
ただ、バリアフリーや障害者支援を仕事にする方は、一度この表記問題をしっかりと考えてみることをお勧めします。
あまり深く考えず「何となく」どちらかを使用していると、批判を受けたときにアタフタしてしまい、信念が欠如している印象を与えてしまうからです。
「どちらも正解だと思う。ただ、私は〇〇な理由により、この表記を使用しています。」と信念を持って相手に伝えれば、きっと理解してくれる筈です。
私に相談してきた冒頭の知人も、そのことをしっかりと考えた上で相手に伝えたら、その方は理解してくださり「今後も応援します!」と言ってくださったそうです。
表記問題その2:「障害者」「障害をお持ちの人」「障害を抱える人」という表記の問題につづく。
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