【バリアフリー商品開発 〜シートベルト編〜】
記事の概要
・シートベルトを高齢者が持つバリアフリー目線で見直すと、意外な欠点が浮かび上がる。
・その欠点とは? その欠点を解決するアイデアとは?
・そのようなアイデアの積み重ねがブルーオーシャン戦略成功の鍵になる。
今回のテーマは「シートベルト」です。
高齢者デイサービスでは、毎日高齢者の送迎を行います。
その際は、もちろんシートベルトをしてもらいます。
でも、シートベルトをバリアフリー目線で見た場合、1つ困り事があります。さて、その困り事とは何でしょうか?
答えは「シートベルトがややこしい」です。
下の写真を御覧ください。
シートベルを挿入するバックルが全く同じ形で同じ色。なので、シートベルトをどっちに入れるべきなのか分かりません。ややこしいのです。
組み合わせの違う方のバックルを選択していまうと、シートベルトは入りません。
「あれ? おかしいな??」と、何度トライしてもシートベルトが入らず、困っている高齢者を目にします。もちろん、その際は介護ヘルパーが手伝いますが…
余りに分かりにくいので、バックルにこんなことを記載している送迎車もあります。
バリアフリー目線の商品開発ヒント
そこで、シートベルトとバックルの組み合わせ毎に色・模様・形を合わせる。これだけで問題の殆どは解決します。
例えば、右座席用のシートベルトとバックル双方には赤い丸印が付いていて、左座席用のシートベルトとバックル双方には黄色い星型の印が付いている。
このようにするだけで高齢者や障害者に配慮した立派なバリアフリーシートベルトになります。
非常に単純なアイデアです。このようなシートベルトというのは、もう既にあるように思ったのですが、今のところ見かけません。カラフルなバックルカバーを別売りしているネットショップは見かけたことがあるのですが、シートベルトとバックルとを組み合わせて分かり易くするためのものではないようです。
バリアフリーはすべての人を幸せにする(ユニバーサルデザイン)
シートベルトが分かりやすくなると若い人や健常者も助かります。私も間違えることがあります。
また、介護ヘルパーは、高齢者が送迎車に乗り降りする際も介助しますが、そのときも助かります。以下、その状況を説明します。
- たとえば、介護ヘルパーが高齢者Aさんと高齢者Bさん高齢者Cさんを送迎車に乗せる場面をイメージしてください。
- 介護ヘルパーは、まずAさんが送迎車に乗り込むのを手伝います。足腰や認知能力が衰えた高齢者にとって、送迎車の乗り降りは危険だからです。
- その際、介護ヘルパーはBさんとCさんに「まずAさんに乗ってもらいますから、それまで玄関の椅子に座って待っていてくださいね」と念押しします。
- そして、Aさんが送迎車に乗り込むのを介助します。介護ヘルパーはAさんを座席に座らせシートベルトを装着します。
しかし、高齢者はせっかちな人が多いのです。「立っているのがやっと」なのに、BさんはAさんの介助中に送迎車に1人で乗り込もうとするのです。
この場合、近くに別の介護ヘルパーがいればBさんを制止して貰えますが、介護ヘルパーが1人のときは焦ります。Bさんは立っているのもやっとなので転倒の危険性があるからです。
このように、高齢者施設では迅速に高齢者の乗降介助をしたい場合が多々あります。そんな時、シートベルトとバックルの組み合わせが瞬時に分かると、介護ヘルパーは助かるのです。
なお、そもそも介護ヘルパーひとりで乗り降り介助するのが間違っている。介護ヘルパーを2人にすべきだ、という感想を持つ人もいるかと思います。
もちろん、このような場合は介護ヘルパーが2人で乗降介助します。でも、その際に高齢者Cさんが突然「トイレに行きたい」と言って、もうひとりの介護ヘルパーが付き添わなければならない。結局、乗降介助のヘルパーは1人になる。
レアケースのように思われるかもしれませんが、高齢者施設ではこんなことが結構頻繁に起こります。なので、分かり易いシートベルトはとても助かるのです。
バリアフリー目線によるブルーオーシャン戦略
クルマの世界も、他社製品との差別化が難しくなっています。
どのメーカーも同じようなタイプ、同じような価格帯のクルマを販売しているからです。
そこで、
「分かり易いシートベルト構造を採用。
高齢者にもお子さんにも簡単装着できます。」
などとアピールすれば、容易に他社のクルマと差別化できます。このような小さなアイデアの積み重ねによりブルーオーシャン市場を開拓できるのです。
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