【バリアフリーホスピタリティ 〜味噌汁・お椀編〜】
記事の概要
・味噌汁などを入れるお椀。これをバリアフリー目線で見直すと、意外な欠点が浮かび上がり、そこから新しいアイデアが生まれる。
・その欠点とは? そのアイデアとは?
・超高齢化社会において必要となるお椀のアイデアについて考察します。
和食って美味しいですね。
若い頃、私は和食を余り好まなかったのですが、年を追うごとに「和食っていいなぁ。」と思うようになりました。しっかりと出汁をとったお味噌汁なんか最高です。
でも、味噌汁が入ったお椀(下の写真)をバリアフリー目線で見ると、1つ困り事があります。さて、その困り事とは何でしょうか?
答えは「お椀の蓋が取りにくい」です。
これは誰もが経験していると思います。お椀の蓋がピッタリとお椀にくっついてしまうと蓋が取れずに苦労します。
蓋を取るコツは、まず片手でお椀の外周を両サイドから少し潰し、もう一方の手で蓋を持ち上げれば取ることができます。
でもこの作業、手先にチカラが入らない高齢者や障害者には無理です。
蓋を取ることができずに困っている人は非常に多いです。
「蓋が取れない」とお客様を困らせては、「温かい味噌汁を」との思いで蓋をかぶせた折角の気遣いが台無しです。
バリアフリーホスピタリティ
そこで、このようなお椀をお出しする際は、お客様のテーブルに置く際に
「蓋をお取りしましょうか?」と一言添えましょう。
喜んでい頂けますよ。
また、厨房からお客様がいるテーブルまでそんなに距離はない筈で、すぐに味噌汁が冷めることもないので、いっそのこと「蓋なし」で提供してもいいですね。
「蓋を疑う」…シニアマーケット ・高齢者ビジネス では必要な着眼点です。
なお、同趣旨のブログ記事【バリアフリーホスピタリティ ~ミルク編~】もご覧下さい。
バリアフリー目線の商品開発ヒント
「温かい味噌汁を」という飲食店側の気遣いは大事です。でも「取りにくい蓋」をかぶせるのも問題です。
そこで、「空気穴がある取りやすい蓋」の開発という着眼点が生まれます。
空気穴があれば空気が外に逃げるので取りやすいですし、穴を小さくすれば、味噌汁も冷めません。
この手の商品は既に開発されているかと思ったのですが、意外にありません(もしあったら教えてください)。
空気穴に限らず、蓋の外縁を工夫するなど他の手段によっても取りやすくなると思います。「取りやすいお椀の蓋」は多くの人から望まれています。
バリアフリー目線によるブルーオーシャン戦略
空気穴のあるお椀の蓋。ありそうない商品です。
そこで、「介護用のお椀 〜高齢者でも簡単に蓋をあけることができる特殊構造を採用〜」などとアピールすれば、唯一無二の商品を販売できます。
高齢者ビジネスの市場規模は大きく、これからアメリカや中国でも高齢化が進み、需要は増加する一方です。まさにブルーオーシャン市場です。
介護の現場から
介護の現場でも、このお椀の蓋問題は頻繁に発生します。
厨房の方は「温かい味噌汁を」との思いで、お椀に蓋をします。
しかし、殆どの高齢者が蓋を取れない。気の利いたヘルパーさんならテーブルに料理を置いた後に蓋をとってあげます。しかし、新人ヘルパーの場合などは蓋をそのままにして戻ってきてしまい、あとで先輩ヘルパーに注意されています。
「取りやすいお椀の蓋」があればそんな問題は起こらないのですが…
バリアフリーはすべての人を幸せにする(ユニバーサルデザイン)
お椀の蓋が取れない…これは高齢者や障害者に限らず、健常者でも経験していることだと思います。
私も何度も経験しました。どうやっても取れない時があり、チカラ任せに取ると味噌汁がこぼれたり、蓋が逆さまになって味噌汁の中に入ってしまったり。
「取りやすいお椀の蓋」は健常者の暮らしも便利にするユニバーサルデザインの蓋なのです。
バリアフリー目線の大切さ
温かい味噌汁を提供するために「お椀に蓋をかぶせる」。そんなの常識。…この固定観念が、多くの人を困らせています。【固定観念の罠】です。
健常者であれば、頑張って何とか蓋をとることができるので、その観念は社会に固定されたままです。でも、高齢者や障害者が持つバリアフリー目線は、その固定観念に対して堂々と「NO!」と突きつけます。バリアフリー目線は固定観念を打ち破るパワーがあり、それが新商品開発のヒントになるのです。
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