【一歩足りないバリアフリー 〜シャワー浴編(1)〜】
記事の概要
・高齢者施設で使われているシャワー浴装置のアーム。これをバリアフリー目線で見直すと、意外な欠点が浮かび上がり、そこから新しいアイデアが生まれる。
・その欠点とは? そのアイデアとは?
・シャワー浴装置を一歩すすめるアイデアについて考察します。
今日のテーマは【シャワー浴】です。
高齢者は入浴が大好き。デイサービスを利用する高齢者の一番の楽しみは入浴です。高齢者の介護施設には、そんな高齢者の入浴を介助するための様々なバリアフリー装置があります。
例えば、これ↓…高齢者がシャワー浴を行う際に使用する装置です。
使い方は、この通り↓
【使用方法】
(1)この装置は可動式のアームを左右に備えており、未使用時は、アームは壁側に垂直に収納されています。
(2)左右のアームの間に椅子を設置して高齢者に座ってもらいます。
(3)左右のアームを水平方向に持ち上げます。
(4)シャワーの栓を開けると、アームから温水が吹き出されて、高齢者は全身にシャワーを浴びることができます。
でも、バリアフリー目線で見た場合、このシャワー浴装置は「もう一歩足りないバリアフリー装置」なのです。さて、どこが一歩足りないのでしょう?
答えは「アームが動くので危険」です。
足腰が弱って自立歩行に不安がある高齢者は、常に「手すり」や「掴まる所」を探しています。なので、このアームを掴んでしまうのです。可動式のアームですから、立ったままこれを掴んだら大変。ほぼ間違いなく転倒します。
入浴を介助する介護ヘルパーも、高齢者がこのアームに掴まらないよう余計な気を使います。
大変な努力を積み重ねて完成させたシャワー浴装置。もう一歩足りないだけで、高齢者に怪我をさせたら大変ですし、その努力の積み重ねが台無しになります。非常に勿体無いです。
バリアフリー目線による商品開発ヒント
このシャワー浴装置にアームを固定する何らかの手段を付けるべきです。
例えば、安全ボタンを押さないとアームが動かない機構にする。安全ボタンを押していればアームが動くけど、安全ボタンを押していないとアームは動かない。これなら、アームを掴んでも大丈夫です。
言い換えると、高齢者がアームを掴んでも動かないようにして、アームが「手すり」としても機能するのであれば、非常に便利で画期的な商品に生まれ変わります。
あと一歩の気遣いをするだけで、非常に便利で安全性の高い装置になります。
「高齢者は常に掴まる所を探している」…バリアフリー市場 ・高齢者ビジネス では必要な着眼点です。
なお、同趣旨のブログ記事【一歩足りないバリアフリー 〜シャワー浴編(2)〜】【バリアフリー商品開発支援 〜クルマのドア編〜】【バリアフリー商品開発 〜送迎編〜】【一歩足りないバリアフリー 〜クルマのドアノブ編〜】【一歩足りないバリアフリー 〜福祉車両編〜】もご覧下さい。
バリアフリー目線によるブルーオーシャン戦略
このように、高齢者・障害者・介護ヘルパーなどの意見をしっかりと聞き取り、もう一歩踏み込んだバリアフリーを実現すれば、他の追随を許さない「手すりになるアームを備えたシャワー浴装置」になります。
高齢者ビジネスの市場規模は大きく、これからアメリカや中国でも高齢化が進み、需要は増加する一方です。まさにブルーオーシャン市場です。
コメント