中小企業・個人向けの特許の取り方 小さなアイデアでも大丈夫! 

コンセプト

小さなアイデアで「進歩性要件」を突破する方法

今回は、商品開発やアイデア出しの話から少し離れて、特許権の取り方のコツをお伝えします。

折角グッドアイデアを出して商品を開発しても、他社に真似されては勿体ない。なので、特許権獲得は非常に大事です。

特許明細書の書き方など形式的な話は様々な書籍や特許事務所のサイトで紹介されているので、ここでは実質的で大切な部分をお伝えしたいと思います。

特許出願人を悩ます進歩性要件

特許権を獲得する際に、最大の難関となるのが「進歩性要件」です。

特許権を取るには、その発明が従来技術に比べて「新しい」だけでは足りず、ある程度「進歩」していなければなりません。

特許出願しても拒絶される発明は多数ありますが、そのうちの殆どがこの「進歩性要件」をクリアできなかった発明です。よって、進歩性要件をクリアする方法を知ることが特許権獲得のカギとなります。

進歩性をクリアする方法 〜2歩先を考えるアイデア戦略〜

進歩性要件をクリアする方法として「2歩先を考えるアイデア戦略」があります。

論より証拠。実際にこの戦略により特許権を獲得した「預金通帳のアイデア」を紹介します。

ある経理担当が考えた預金通帳のアイデア

ある経理担当者が「預金通帳」と「キャッシュカード」とを一緒に持ち歩きたい。そう思いました。

そこで、経理担当者は両者を輪ゴムで留めた。。。

しかし、これは危険過ぎます。すぐにキャッシュカードが輪ゴムから外れてしまい、キャッシュカードを紛失してしまう恐れがあるからです。

そこで、経理担当者はヒラメキました!

「そうだ! 預金通帳の見開きページにポケットを付けよう! これならキャッシュカードをしっかりと保持できる。」

そう考えた経理担当者は早速試作品を作りました。試作品は上々の出来。これならキャッシュカードを預金通帳と一緒に持ち運べそうです。

そこで、この経理担当者はこのアイデアで特許権を取りたいと考えました。

ところが、「預金通帳にポケットを付けたくらいじゃ特許にはならないかもよ」という同僚の言葉にガッカリ。特許権獲得を諦めまかけました。

しかし、ある専門家から

諦めるのはまだ早い!

そのアイデアの欠点を探してみて下さい。

その欠点が見つかれば、その欠点を解決する新しいアイデアが見つかりますよ。

と言われ、「ポケット付きの預金通帳」の試作品を使い続けました。

そしてある日、銀行のATMの前で、重大なことに気づきました。

「あれ? この通帳アイデアには致命的な欠点がある。 ポケットにキャッシュカードを入れたまま通帳記入したらキャッシュカードがATMに吸い込まれてしまい、ATMが壊れちゃう。」

その後、経理担当者は、この欠点を克服すべくアレコレ考えました。

そして、1ヶ月後、再度ヒラメキました。

「そうだ。ポケットを隅っこにズラして、キャッシュカードがちょっと飛び出るようにしよう! そうすれば抜き忘れを防止できる!!」

つまり、下の図(左)のようにポケットを真ん中に設けるのではなく、下の図(右)のように隅にズラしてキャッシュカードの一部がキャッシュカードの外に飛び出るようにしたのです。

これなら特許権を取れるかも。そう考えた経理担当者は、以下の2つの発明を含んだ特許出願を行いました。

発明1:キャッシュカードを収納するポケットを備える預金通帳。

発明2:キャッシュカードの一部が外部に飛び出る位置に、発明1のポケットを備える預金通帳。

発明1は最初のヒラメキ。発明2は2番目のヒラメキです。

その後、特許庁の審査を受け、発明1は予想通り「進歩性なし」で拒絶されたものの、発明2は見事特許権を獲得しました(特許第3289211号)。

これが「2歩先を考えるアイデア戦略」です。

つまり、1歩先のアイデアが生まれたら、次に「そのアイデアの欠点」を探す。そして、その欠点を解決する2歩先のアイデアを考える。こうすれば特許権の獲得の可能性がグンと伸びるのです。

もう一度この戦略を整理します

【1歩先のアイデア】預金通帳にキャッシュカード用のポケットを付けた。

【そのアイデアの欠点を探す】キャッシュカードを抜き忘れるとATMが壊れる。

【2歩先のアイデア】カードが飛び出る位置にポケットを付ける。

この3つのステップを実行するだけで、

進歩性要件をクリアする可能性が大きくなります。

もちろん、特許の世界はケースバイケースなので、1歩先や半歩先のアイデアでも特許権を獲得できる場合もありますし、2歩先や3歩先を考えても拒絶されてしまい特許権を獲得できない場合もあります。

 

ただ、曖昧な進歩性要件を理解する上で、この「2歩先を考えるアイデア戦略」は非常に分かりやすい典型例と言えます。

 

特許出願したいアイデアがある方は是非この手法を使ってみてください。

また、この戦略を用いて発明相談を行っている法律事務所があります。興味のある方は下欄の「問い合わせ」からお問い合わせ下さい。

関連記事「ビジネスモデル特許の取り方(クレジットカードのアイデアが特許になるまでの話)」につづく

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