小さなアイデアを特許にする方法
前回のブログで「預金通帳の小さなアイデアを特許のする方法」についてお伝えしました。
預金通帳は「物の発明」ですが、今回は、その続編で「IT系の発明(いわゆるビジネスモデル発明)」の話をしたいと思います。
クレジットカードに関する発明なのですが、預金通帳と同様、2歩先を考えて見事に特許権を獲得した事例です。
いま流行りのキャッシュレス。沢山のポイントが貯まるなどサービス合戦が繰り広げられていて、ポイントの使い途や使い方も簡単になっています。
しかし、数年前までは、クレジットカードに付与されるポイントは、何処でどう使えるのか、その使い方は難解でした。
しかも、ポイントには有効期限があるので、使い方が分からないままポイントが失効してしまう。そんなケースが頻発しており、この会社員(Aさん)もその1人でした。
「なんか悔しい。ポイントをもっと簡単に使える仕組みはないものか?毎日のように行くコンビニとかで手軽にポイントを使えないか?」Aさんはそう思い、アレコレ考えました。
そして、ヒラメキました。
「そうだ!コンビニ端末からポイント分の商品券を印刷して、その商品券を使ってコンビニで買い物できれば便利だ!」
Aさんのアイデアは下図の通りです。
- コンビニには「コンビニ端末」と呼ばれる装置が設置されており、まずはその装置にクレジットカードを読み取らせ、ポイント分の商品券を印刷する。
- 例えば、1000ポイント貯まっていたら、1000円分の商品券が印刷されて、コンビニ端末から出てくる。
- そして、お弁当などのコンビニに置かれている商品を購入する際、その商品券で支払う。
- このようにすれば、ポイントを誰でも簡単に使用でき、ポイントを無駄にすることがない。
なかなかのグッドアイデアです。
このアイデアで特許権を獲得できる可能性もありますが、特許庁から拒絶されてしまう可能性もあります。
そこでAさんは前回のブログ記事で紹介した「2歩先を考えるアイデア戦略」を実践しました。
このアイデアの欠点を見つけ出し、その欠点を補う改良アイデアを考えたのです。
さて、このアイデアの欠点とは何でしょう?それを補う改良アイデアとはどのようなものなのでしょうか?
このアイデアの欠点は意外と簡単に見つかりました。
「お釣り」の取り扱いを考えていなかったのです。
例えば、1000円の商品券を印刷して800円のお弁当を購入した。その場合、200円のお釣りはどうなるのか?これを考えていなかったのです。
「普通に考えて、200円はクレジットカードのポイントに戻すかなぁ」
Aさんはそう考え、下図のような仕組みを考えました。
そして、更に「200円をコンビニの手数料として徴収してもいいよなぁ」
Aさんはそう考え、下図のような2つ目の改良アイデアを考えました。
これなら特許権を取れるかも。そう考えたAさんは、以下の発明を含んだ特許出願を行いました。
発明1:クレジットカードのポイント分の商品券をコンビニ端末で印刷し、それを使ってコンビニで買物をする仕組み。
発明2:上記発明1においてお釣りが発生した場合、それをクレジットカードのポイントとして戻す。
発明3:上記発明1においてお釣りが発生した場合、それをコンビニの手数料にする。
その後、特許庁の審査を受け、発明1は「進歩性なし」で拒絶されたものの、発明2と発明3は見事に特許権を獲得しました。
これが「2歩先を行くアイデア戦略」です。
つまり、1歩先のアイデアが生まれたら、次に「そのアイデアの欠点」を探す。そして、その欠点を解決する2歩先のアイデアを考える。こうすれば特許権の獲得の可能性がグンと伸びるのです。
もう一度この戦略を整理します。
1歩先のアイデア:クレジットカードのポイント分の商品券をコンビニ端末で印刷し、それを使ってコンビニで買物をする仕組み
そのアイデアの欠点を探す:お釣りの扱いが未確定だった。
2歩先のアイデア:お釣りをポイントとしてクレジットカードに戻す。または、お釣りをコンビニの手数料にする。
この3つのステップを実行することにより、進歩性要件をクリアする可能性が大きくなります。
もちろん、特許の世界はケースバイケースなので、1歩先や半歩先のアイデアでも特許権を獲得できる場合もありますし、2歩先や3歩先を考えても拒絶されてしまい特許権を獲得できない場合もあります。
ただ、曖昧な進歩性要件を理解する上で、この「2歩先を行くアイデア戦略」は非常に分かりやすい典型例と言えます。
特許出願したいアイデアがある方は是非この手法を使ってみてください。
また、この戦略を用いて発明相談を行っている法律事務所があります。興味のある方は下欄の「問い合わせ」からお問い合わせ下さい。
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