バリアフリー目線はアイデアを無限に生み出す源泉
以前、このブログの記事で「アイデアを無限に生み出す方法」を紹介しました。
記事の概要
- アイデアは困り事から生まれるので、様々な人に困り事を聞き回れば、次々にアイデアが浮かんでくる。
- 特に、最も困っている人(高齢者や障害者)から困り事を聞き、その人に焦点を当てて商品を開発すればヒット商品になりやすい。
- なぜなら、最も困っている人にとって使いやすい物は、誰にとっても使いやすい物だから。
という内容で、その成功例として「ライター」の開発秘話をお伝えしました。
詳しくはコチラのブログ記事を御覧ください。
今回はその続編で、スワニー社のキャリーバッグの成功例を紹介します。
バリアフリー目線の大ヒット商品 スワニーのキャリーバッグ
バリアフリー目線(高齢者や障害者の目線)でブルーオーシャン市場を開拓したスワニー社のキャリーバッグの話です。
この話の主人公は、私が尊敬する三好鋭郎さん。
小児麻痺が原因で足に障害が残り、歩行困難な状態になった三好さん。数十年後、彼はビジネスマンとして世界を駆け回っていました。
しかし、不自由な足で重たい荷物を持ち歩くのは大変。そんなとき、彼は当時(今から約50年前)としては珍しいキャスター付きの大型トランクに巡り会います。
キャスターが付いているので重たい荷物も持ち運びがラク。更に、そのトランクは大型なので背が高く、中心部に持ち手が付いているので杖の代わりになる。なので、歩行もラクになりました。
その後、彼は荷物が少ないときでも日常的にそのトランクを持ち運ぶようになりました。まさに「動く手すり」です。
しかし、大型のトランクゆえ、階段の上り下りや、タクシーの乗降では非常に困りました。
そこで、彼は小型のトランクに延び縮みする取っ手を付ければ便利になる。そう考えて「杖代わりになる小型キャリーバッグ」の開発に取り組みました。
その後、紆余曲折を経て「杖代わりになるスワニーのキャリーバッグ」という大ヒット商品を完成させます。
バリアフリー目線の商品開発
このキャリーバッグのアイデアは次の通りです。
下の図は、通常のキャリーバッグの側面です。バッグの下にキャスターが付いており、図の左サイドには延び縮みする取っ手が付いています。どこにもある普通のキャリーバッグです。
しかし、このキャリーバッグは取っ手が左サイドにあるため(中心部ではないため)不安定で、身体をしっかりと支えることができませんでした。
そこで、彼はこの取っ手を内側(下の図で言えば右側)に傾けるように湾曲させました。
すると、グリップ部分がバッグの中心近くに位置するようになり、前方にスムーズに進むと共に、身体をしっかりと支えて杖代わりになります。「杖代わりになるスワニーのキャリーバッグ」の完成です。
その後、販売でも紆余曲折がありましたが、結果的にキャリーバッグは大ヒット。2012年の時点で累計販売数70万台を突破し、日本のみならず世界各国で引く手あまた。彼が開発したキャリーバッグは、いまでは主力商品として彼の会社をも支える存在になりました。
バリアフリーはすべての人を幸せにする(ユニバーサルデザイン)
「廊下に手摺がないのでトイレや風呂まで歩くのに重宝している。」、「音楽会やお呼ばれに使わせてもらっている。」など彼のもとには、歩行困難な人たちから多数の感謝の言葉が寄せられました。年間6000通もの手紙が来るほどの反響です。
でも、スワニーのキャリーバッグを購入したのは歩行困難な人だけではありません。多数の健常者も購入しています。足に障害がなくても長旅は疲れます。スワニーのキャリーバッグは健常者の身体も支えているのです。
バリアフリー目線のブルーオーシャン戦略
キャリーバッグは巷に溢れています。
各メーカーは、他社製品との差別化のためデザインや素材に工夫を凝らしています。もちろん、それらは素晴らし努力です。
でも、キャリーバッグをバリアフリー目線(障害者や高齢者の目線)で見直せば、思わぬ着眼点が得られ、その結果他社製品と差別化できます。
障害者や高齢者は「健常者が知ることができない意外なところで困っている」からです。
健常者であれば我慢してバッグを持って歩いてしまいます。でも足に障害がある彼にはそれが過酷であり、その過酷さがキャリーバッグの開発に繋がりました。まさにバリアフリー目線による大ヒット商品。他社にはない着眼点により、競争相手のいないブルーオーシャン戦略を成功させました。
当然、新商品の製造・販売には苦労もありますが、バリアフリー目線を活用すれば、他社にはない圧倒的にユニークな商品を開発することができるのです。
三好さんも「障害が気づかせてくれた、健常者には見えない市場」と自ら語っています。
興味のある方は「開発秘話を綴った記事」があるので是非御覧ください。
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