【バリアフリー商品開発支援 〜化粧品の容器編〜】
記事の概要
・ローションや乳液などの容器を、高齢者・障害者が持つバリアフリー目線で見直せば、意外な欠点が浮かび上がり、そこから新しいアイデアが生まれる。
・その欠点とは何か? そのアイデアとは?
・そのようなアイデアの積み重ねが、ブルーオーシャン戦略成功の鍵になる。
今回のテーマはローションや乳液などの容器です。
写真の容器は普通の容器ですが、これをバリアフリー目線で見ると、1つ困る事があります。
その困り事とはなんでしょう?
答えは「高齢者施設では、そのローションの持ち主や使い方が分からなくなり混乱する。」です。
理由を説明します。
高齢者のデイサービスを利用する高齢者はお風呂が大好き。介護ヘルパーは、そんな高齢者の入浴介助を行います。
入浴する高齢者の人数は(施設規模や日によってマチマチですが)一日16人くらい。介護ヘルパーは入浴介助担当と、着脱(高齢者の着替えの手伝い)担当に分かれ、互いに連携しながら介助を行います。
一定時間内に16人の入浴介助を安全・確実に行うのは大変です。入浴介助担当のヘルパーも、着脱担当のヘルパーも大忙し。入浴コーナーはいつでも混乱状態です。
着脱担当のヘルパーは、着替えの手伝いだけでなく、高齢者のスキンケアなども行います。
入浴後、「ローションを背中に塗って欲しい」、「乳液を全身に塗って欲しい」、「塗り薬を患部に塗ってほしい」などの要求があり、それに逐一応じます(患部に薬を塗るのは看護師の役目です)。
なので、デイサービスでは、ひとりひとりの高齢者から種類の異なるローションや乳液・塗り薬等を預かるのですが、これが混乱の元。
不用意に預かると、混乱状態の入浴コーナーで「持ち主は誰なのか?」「背中に塗るのか? 足に塗るのか? それとも全身に塗るのか?」などが分からなくなり、入浴コーナーの混乱が更に増幅される。
山田さんのローションを間違って鈴木さんに塗ってしまう。背中に塗るべき乳液を足に塗ってしまう。このようなミスが連発され、ヘルパーは叱られ、高齢者も嫌な思いをするのです。
そこで、このミスを防止するため、介護ヘルパーは容器に「持ち主の名前」と「注意事項や使い方(背中に少量塗る、全身に塗るなど)」をマジックペンなどで直接記入しています。
容器の空きスペースに「山田○○様の乳液。入浴後背中に塗る。」「鈴木○○様のローション。入浴後、全身に塗る。」などです(下の写真のモザイク部分)。
しかし、普通の容器には「名前や注意事項を書く専用の場所」が無いので、ヘルパーは縦に書いたり、小さく書いたり…色々と苦労しながら書いています。
バリアフリー目線による新商品開発ヒント
そこで、乳液やローションの容器に「名前や注意事項を記入できる場所(空白のエリア)」を設けて販売する。或いは、乳液やローションの容器に「名前や注意事項を記入するための札(防水)」を付けて販売する。
このようにすれば、ヘルパーのミスは無くなり、高齢者も嫌な思いをしなくて済みます。
高齢者の専用品を販売する…シニアマーケット、バリアフリー市場で必要な着眼点です。
バリアフリー目線の大切さ
容器に注意事項を書き込みたい。
こんな要望があることは、高齢者デイサービスで入浴の着脱係になるまで思いもしませんでした。
「言われてみれば当然だけど、言われないと分からない。」そんな貴重なことを教えてくれる。それがバリアフリー目線の魅力です。そして、そこから新しいアイデアが生まれるのです。
バリアフリー目線によるブルーオーシャン戦略
私は、書き込みエリアを設けた詰替用容器を一部見かけたことはありますが、書き込みエリアがある又は名札を付けた乳液やローションはまだ見たことがありません。
過当競争に陥り、他社製品との違いが曖昧な乳液やローションであっても、
「名札付き!もう高齢者施設で他人の物と間違われない!」
などとアピールして販売すれば他社製品と容易に差別化できます。
しかも、介護を中心とした高齢者ビジネスの需要は増加する一方。日本のみならずアメリカや中国などでも、これから本格的な超高齢化が進みます。まさにブルーオーシャン市場です。
バリアフリーアイデアは全ての人を幸せにする(ユニバーサルデザイン)
ただ単に名札付けたり、記入エリアを設けるだけで、高齢者も介護ヘルパーも嫌な思いをしなくなります。また、一般家庭でも、「女性専用。パパは使わないで」などと便利に使うことができます。
バリアフリー目線から生まれるアイデアはすべての人を幸せにするのです。
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